朝起きれば、青いものしか浮かばなくなっていた。青いものの名前しか分からなかった。青くないものの名前はぜんぜん分からなかった。全然思い出せなくって、そのまま学校へ行った。
「そら」は青くって、ぼくを包み込んでくれるような「そら」で、前より「そら」が綺麗に思えた。でも「そら」と何か違ういろのものはすっごくなかよさそ
うで、どことなく寂しかった。あおじゃないのに、なんで「そら」と仲良くしてるの。ぼくも仲良くしてよ。あおくないものはいらないんだよ。あおくないもの
はわかんないんだよ。
「じゃあ、青空くん。この問題といてみて?」
「はい。答えはあおです」
……ちがうよ、あおじゃないよ。7だよ。どうしてこんなのも答えられないの。ぼくのばか。
ぼくは「あお」としか言えなくって、悲しんでいたら、友達が色鬼に誘ってくれたんだ。
「じゃあ、青空くんおにね! 色いって!」
ぼくは考えた。「あお」以外の色を考えた。ずっと考えた。でも他に何色があるかわかんなくって。色の名前がでてこなくって。ぼくは真上を見た。
「……あお」
またいっちゃった。
ぼくはその場にすわりこんで顔を両手で隠した。どうしてあおしかわかんないの。
すると、上に手のひらをむけながらひとりの友達がいった。
「……わあ、白いくもひとつないそらって綺麗だね。青空くんのおかげで綺麗な空を見れたよ。ありがとう!」
しろ……い?それってそらと仲良しのあおくないふわふわしたもの?……あれってしろって言うんだあ。ほんと、しろいものがないとそらは綺麗だね。なんだか幸せな気分になれたよ。
すると、もうひとりの友達が走り出した。すると「あおい」ものを手でタッチする。
「……あれ、あおい蝶がいるよ! くろと仲良しさんだ。青いシーソーで遊びたいのかな?」
くろ……?それって蝶々さんのあおが囲んでいるいろのこと?……あれってくろっていうんだ。確かにあおとなかよしさんだあ。蝶々さんは楽しそう。
すると、あおでもしろでもくろでもないものがぼくの肌にぽつん、とあたった。
「わわ! 透明な雨が降ってきたよ! 急いで教室に戻ろう!」
透明?……透き通っていろんないろがみえる。これが「透明」なんだ……。
ぼくは皆についていって、教室に戻った。教室から外を見ると、綺麗だった空は、なにかしろじゃないふわふわでなくなっていた。
「灰色のくもさん……。綺麗なそら隠しちゃった……」
灰色?……ああ、このしろじゃないふわふわさんか。空を隠すなんていじわるな色だなあ。
僕達はしょうがないから教室で遊んでいたけど、ふと窓の外を見ると、空には綺麗な虹がかかっていた。
「あか、おれんじ、きいろ、みどり、あお、あい、むらさき……」
「わわ! 青空くん、あお以外の色自分でいえてるよ!」
……あか、おれんじ、きいろ、みどり、あお、あい、むらさき。色っていろんな色。忘れてた自分が悔しいよ。色を思い出せたのも、「お友達」のおかげだね。ありがとう。
fin