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恋心以心伝心  −  0 ハジマリのキス

「ちょ、痛い!」

 あたしがそう言っても、その手は離れることも、ましてや力を緩めることさえしなかった。

「痛いってば!」

 もう一際大きな声で言って、握られている手をブンブンと振ったが、先ほどと同じように力は緩まらなかった。
あたしはさすがにむかついてきて、離してよ!と力ずくで握られていた手を振り解いた。
 目の前にあったのは図書室。ここまでくると、昨日の委員会決めのことを思い出した。
前期は保険委員だったのだが、今回はあまり人気がなかった、図書委員を選んだ気がする。
 うちの学校は前期が4月中旬から、夏休みが終わるまでで、夏休みが終わった後すぐに後期委員会を決め、次の日から始まる。
 それを決めた人は、かなり適当な人だったんだろうなあ、とつくづく思う。

「ああ、そういえばあたし図書委員なんだっけ」

 ぼそり、と思い出したように呟く。

「忘れてたのかよ」

 そういって片桐先輩はくすくす笑う。あたしはそんなの無視して、予鈴が鳴っているのにも気づかず図書室に入る。
 ──図書室の空気は、落ち着くなあ。
 小学生の時から、あたしは図書館や図書室、本屋などの本が沢山並んでいるところは安心する。

 小さい頃、母親が朝から夜の11時辺りまで仕事で、父親が何もかもやってくれていた生活だった。
絵本を作る仕事をしていたお父さんは、早速作った絵本をあたしに何度も読み聞かせをしてくれていた。
 だけど、人生ではじめての入学式だという前日に、お父さんは事故に遭って亡くなってしまった。
そんなこともあり、お父さんが読んでくれていた頃から本が大好きになり、今でもこうして大好きなのだろうと思う。

 あたしはどんどん進んで行き、読みかけの本を手にとった。だけど、少しはみ出ていた紙の部分を掴んでしまって、静かな図書室にはビリッ、と大きく破れた音に続き、バタンという本が落ちる音が響いた。
 
「え」
 
 あたしはその場の状況を理解できず、落ちた本と破れた紙をただただ見つめていた。
 音を聞いたのか、片桐先輩が慌ててやってきて、あたしの足元を見てただただ凍っていた。
だけれど、片桐先輩はあたしとは違って、にこっと笑った。

「俺さあ、同じ本家にあって、それ図書館用にしてもいいんだけど」

 その言葉にあたしはぴくっと体を震わせた。

「正直に謝って、弁償したで済ませればいいと思うんだけど」

 あたしはごくりと唾を飲み込んで、チラッと片桐先輩の方を見た。

「えと……それ」
 
 あたしが言う言葉をわかっていたかの様にその言葉を遮って、片桐先輩は言った。

「俺と付き合うなら、助けてやってもいいよ?」
「はい?」
 


2009.7.1. up.
執筆中ニヤニヤしてた私をどうにかしてください。そして見直し中もニヤニヤがとまらな(ry
……失礼しました。

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