恋心以心伝心 − 0 ハジマリのキス
「あら、あんた起きてたの?
まだいびきでも掻いて寝てるかと思ったわ」
──篠原家の母親、麻里子。
お母さんは高校生といわれてもおかしくないほど綺麗だ。あたしの髪は多分、お母さんの遺伝だと思う。
時折「お母さん」と呼ぶのになんだか知らないけど罪悪感を感じる。だけど、やっぱり中身は「おばさん」だ。
そんなお母さんは、髪をくしゃくしゃしながらあたしに言った。
「うるさいなあ。あたしだってたまには早く起きるんだから。それに、あたしはいびきなんて掻いてないし」
お母さんは面倒臭そうにはいはい、と呟きながらキッチンへと入っていった。
それにしても、運命の人との出会い、って何なんだろう。あたしの将来の”ダンナ”となる人に出会うのだろうか。
いつ?どこで?どんな風に?……と質問しても、何か言葉が返ってくるわけじゃあないんだけど。
でも、今日は何かが起きる。そんな予感がする。嫌なことが起きるという、嫌な予感が。
朝御飯をいつもより早く食べ、いつもより10分前に家を出た。
──なんとなく、なんとなく早めに行かなければならないと思ったからだ。
教室についたのは30分丁度だった。
33分程になり始めると、色々な所からおはよう、と声が聞こえてき、そのままこの教室も賑やかになっていった。
ぼーっと座り込んでいると、軽く頭を叩かれたような痛みが走った。 痛い。と呟きながら上を見上げると、顔も見たことのない男子が立っていた。
見る限り結構モテそうだけど少し意地悪オーラが漂っている。
でもなんで、意地悪オーラを漂わせている男子があたしに?
「あの、毎週水曜日委員会だから」
その男子はそう一言言い捨てて去っていった。話をしていた色々なグループは話を止め、その男子を見ながらキャーキャーと盛り上がっていた。
あたしは目を擦り、我に返った。そのままその男子を追いかけ、ちょ、と制服の袖を数センチ程掴んだ。
「……んだよ」
予想はしていたが、間近で見る怒りの顔は身震いするほどだったが、何処か、ほんの少しだけ優しさが混じっているような気がした。
あたしは「え、えと」と少しどもったが、続けて言った。
「委員会って、何のですか? それと……あなたは誰ですかね」
”あなたは誰ですかね”の一言に、女子たちが反応した。その後咄嗟に入学式の時仲良くなった未来が近寄ってきた。
「片桐裕。2年生の先輩だよ。怒るとやばいらしいけど、かなりモテるんだって」
未来は小声で言ってくれたが、それは片桐……先輩とやらに聞こえたらしく、む、と小さく言ってから、あたしの手を握って引っ張った。
2009.6.22 up.
なななななんという。ここからかなり先読めちゃうよね…うん。